ヤドリギの夢

「あ、危なーいっ!!」
 少女の叫び声を聞いた少年は、はっとしてその場から離れる。その目の前に大きな木の枝が落ちてくるのは、それから数秒後のこと。
 …逃げなかったら、直撃していた。確実に。
「ごめん…ありがとう、リル」
「エルト、大丈夫だった?」
「うん、全然平気」
 少女―――リルは、少年―――エルトの返答に安堵の表情を浮かべると、今さっき枝を落とした木を見つめる。

「ヤドリギ様…」
 そこには、まるで人柱のように縛り付けられた一人の女性の姿があった。


 <世界の消える日>―――。
 三年前、それは突然起こった。
 地震、火事、洪水、火山の噴火、そして突然の魔族の襲来―――それら全ての天災から逃げ延びた人は、わずか数千程度だった。今では、この世界は魔族によって支配されているも同然なのである。
 そして、それ以上の被害を防ぐため神木に祈りを捧げたのが、その女性だった。

「姉ちゃん…」
 だが…その時点で、遅すぎたのかもしれない。既に魔族によって侵食されていた神木は、あろうことか唯一『神の声』…神木の声を聴くことができる彼女を、束縛したのだ。
 彼女と一体化したことが神木の“正気”を取り戻したのだろう。直後、神木から眩い光が放たれ、自らに侵食した魔族も、世界を覆い尽くそうとしていた魔族も、まとめて消し去った。魔族の一掃までは至らなかったが、強力な魔族を少しでも減らすことができたのは、ひとえに彼女の祈りのためといえるのだろう。


「…行ってきます」
 “ヤドリギ”の前で、小さく呟き、祈りを捧げる。行ってらっしゃい、と優しい声が聞こえたような気がした。
 彼らはヤドリギに背を向け、歩き始める。その先に、自分たちの平和があることを信じて―――。







なんとなく書きたくなったから書いた話。ネタがなかっただけともいう。
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